「ゴルフ、久しぶりに(5年とか10年とかぶりに)始めようかな」
「シニア世代に入ったけど、誘ってくれる人もいるので、ゴルフやってみようかな」
私が接客をしていた時、しばしばこういった方がご来店されました。

ゴルフは年齢に関係なく楽しめるスポーツだし
自然も感じられるので、ぜひやってほしいな
というのが正直な感想でした。
さて、こんな時販売員は何を思い、何を基準に販売するのでしょうか。

なんか高いものとか売りつけてくるんじゃないの
シニアはお金持ってると思われて・・・
そういった不安をお持ちの方もいらしゃるかもしれません。
その辺のところも解消できるよう、1万人以上の方を接客し、数千件の試打・データ解析をしてきた私が、納得できるクラブの選び方をご提案させていただきます。
販売員の本音
商売である以上、販売員の最終目標はお客様にご購入いただくこと。
できれば高いものをたくさん買っていただきたいと思っています。
さらに効率良く売れるのにこしたことはありません。
これらは販売員の本音と言っていいでしょう。
しかしそう簡単には物事いきません。
多少の強引さが必要なこともあるかもしれませんが、押し売りで売れるほど甘くはありません。
そこで、本音は持ちつつも、実際は「お客様のために」と思っておすすめしていきます。
これが真実です。(例外もあるかもしれませんが、多くの販売員はそうです。)
そのために色々勉強しています。
ゴルフクラブは選ぶのが難しいです。
値段が高ければいいわけではないし、理論と実際が一致しないことも多々あります。
ヘッドスピードやスイングのタイプも考慮しないといけません。
そういったことから単純に「このクラブいいですよ」という売り方は間違っていると言えます。
万人にとっていいクラブなんて存在しないからです。
今回は、かなりのブランクがある方と、いわゆるシニア世代の方に絞ったアドバイスになります。
*用語の解説も入れていきますので、多少長くなることをご了承ください。
クラブ選びの基本は「自分に合っているもの」
クラブ選びの基本は「自分に合っているもの」です。
身長や体重などは実はあまり関係なく、体力やパワーに合わせます。(力よりスピードを考慮)
(ご経験が長い場合はその他に「お悩み」や「打ち方」、「今まで使ってきたクラブ」等を考慮して選びます。)
ただ、久しぶりに再開するとか、シニアになって始めるといった場合、この「合っている」ということ自体が分からないのが正しいです。
(ゴルフにとっての体力やパワーが客観的に計測できない)
(昔は握力等を参考にするという考えもありましたが、今はほとんどこれを考慮しなくなりました。)
ではどうすればいいのでしょうか?
クラブ選びの応用は「それを使う弊害がないか?」
初めてやるのに、あるいはブランクが長すぎる場合、「合っているか」という基準で選ぶことがそもそもできない、というお話をしました。
それができない場合は、「それを使う弊害はないか?」を考えます。
具体的には、
・重すぎないか
・硬すぎないか
・短すぎないか
・ロフトが立ちすぎていないか
・球のつかまりが悪いヘッドではないか
といったことをチェックします。
それぞれの弊害をご説明します。
重すぎると→
・疲れる。(数球なら打てても、18ホール回るとその差が大きく出ます。)
・オーバースイングになる。(オーバースイングとはクラブを振り上げた時、それが大きくなり過ぎることを言います。ボールを上手く当てることが困難になることがあり、いい意味で使われることは少ないです。)
・ダフル。(ダフルとはボールを打つ前に地面を打ってしまうことです。)
・振り遅れる。(振り遅れるとボールは右に飛びやすくなります。)
硬すぎると→
・球が上がらない、つかまらない。(シャフトの戻りを使えないとこういうことが起こります。)
(*シャフトとはゴルフクラブの柄の部分です。)
・短すぎる→ヘッドスピードが出ない。(クラブの長さはヘッドスピードを上げる一番の要素です。)(*ヘッドスピードとは、クラブを振った時のインパクト辺りのスピードを数値で表したものです。)
アドレスがしんどい。(年齢とともに上体を前傾しにくくなるため、プロでも長くする場合があります。)(*アドレスとは構えとほぼ同義です。)
ロフトが立ちすぎだと→
・球が上がらない、つかまらない。(*ロフトとはクラブヘッドの打つ面=フェース面の上向きの角度のことです。)(ヘッドスピードが遅いと、ロフトの効果を借りないと球が上がりません。つかまりにも影響するのですが、難しくなるのでここでは省きます。)
ただしアイアンについては、ロフトを立て重心を低くすることで飛距離重視のクラブを作ります。
球のつかまりが悪いヘッドだと→
・自分でつかまえようとして、悪いスイングを知らず知らずのうちに身に付けてしまう。
(*つかまりが悪いヘッドとは、クラブヘッドをターンさせようとしてもその反応が鈍いものを言います。多くは右に飛んでしまうミスになります。)
大多数の人は、この年齢になると体力的な衰えや身体の硬さがでてきます。(20代、30代と同じというわけにはいきません。)
そこを補うという意味で、上記のことを考慮しクラブを選んでいきます。
結局、具体的には何を選べばいいのでしょうか?
重さ
重さはドライバーで300g(45インチ)を基準にします。
それより長ければ軽く、短ければ重く、が基準になります。
(45.5=290g・46=280g・44.5=310g、といった感じ)
(現状の既製品は45.5インチ前後が多く、46インチ前後は長め、45インチ前後は短めと判断するのが無難です。)
(クラブの長さは0.25インチ刻みで表示されます。)
シニアではこの数値を大きく超えないのが目安となります。
*ちなみに軽すぎる弊害もあります。それは安定感を欠く、再現性が低いなどです。
そういったことからも、この長さに対する重量は参考にすべき数値です。
硬さ
硬さはRを基準にします。
Rはレギュラーの略で、硬いのはS(スティッフの略)です。
その中間のSRというのも物によってはあります。
硬すぎると自分のパワーでしならせることが出来なくなり、シャフトが単なる棒になります。
(つまり自分のスピードで適度にしなる硬さが、「自分に合っている」基準になります。)
その影響で球の上がりとつかまりが悪くなります。
決して硬ければ飛ぶのではありません。(硬いものをしならせるパワーがあるから飛ぶというのが正しいです。)
ただしシャフトの硬さには統一基準がありません。
メーカーの意図がそのクラブに反映されており、「信じて使う」という考え方も必要となります。
長さ
長さはドライバーで45.75インチ前後を基準にします。
元々、クラブの長さが色々あるのはヘッドスピードを変えるためです。
長い方が飛ぶ理屈です。(ただ長すぎると振りにくさが勝り、ヘッドスピードが落ちることがあります。)
クラブで飛ばしたいシニアは、ある程度長いものを使ってヘッドスピードを上げます。
これが一番科学的です。
どうしても長すぎると感じる場合は短く持つ手がありますが、短いものは長くはできません。
プロは短いものを使うことがありますが、それは自分のパワーで飛ばせるからです。
ただ真似るのは危険です。
*ちなみにアイアンの長さは、あまり気にしなくて問題ないでしょう。ドライバーほど長さの違いはありません。(軽量のカーボンシャフトは概ね長めになっています。)
ロフト
ロフトはドライバーで10.5°前後を基準にします。
飛びの3要素(飛距離を決定してしまうもの)というのがあり、「初速・打出し角・スピン量」を言います。
ロフトは特に打出し角とスピン量に影響するため無視できません。
*ただしロフトも表示ロフトと実際のロフトが違っているものがあるのが真実です。
硬さと同様、信じて使わざるを得ないことは否めません。(作り手も、悪気があってやっているものではありません。)
硬さにせよロフトにせよ、初めて使ったものがその人の基準になります。
ある程度経験が長くなったら、ベターのものを求めて、器具を使ってロフト角や硬さ(目安としての振動数)を測ってクラブ選びにこだわっていくのもありだと思います。
「いいスイングをした時にいい球が出る」のが合っているクラブと言えますので、信じたクラブでいい球が出るスイングを作るという視点も必要でしょう。
ヘッド
つかまりのいいヘッドを基準にします。
これは初心者の方には難しいです。
なぜならここに関わる要素がたくさんあるからです。
(*フェース角、ライ角、フェースプログレッション、重心角、重心距離、重心深度などが関わってきます。)
ただここに関してはカタログの説明を参考にして大丈夫です。
(「○○でつかまりを良くしています。」などの表現です。)
以上が具体的なおすすめポイントになります。
本数は何本必要か

選び方のイメージはできたけど、
本数は何本必要かな?

ルール上は14本が上限です
少ないのはかまいませんが
私は14本でのプレーをおすすめしています。
細かい理由が気になる方はぜひ「ゴルフ クラブセッティングの仕方・・・」をご確認ください。
中古と新品ではどちらがいいか

中古と新品ではどうかな?
予算のこともあるし

私は新品をおすすめしています。
クラブは毎年(今は2年に1度が多い)進化しています。
つまり物としては新しい方が優れていると言えます。(企業努力の為)
(ただご経験の長い方は、自分のクラブでの慣れが優位性になることがあり、必ずしも新しいものがいい=合っているとは言えないことがあります。)
進化の恩恵を受けたいので、中古のしかも古いものではそれは叶いません。
あとクラブセッティングにおいて一番重要な「統一感」を持たせることが困難です。
(統一感とは、どの番手も同じ感覚で振れるように、長さが短くなるにしたがって段々重くなる設計になっていることです。その他にもシャフトの硬さや調子といったことも関係します。)(中古でも新しいもので、元々セットで売っているものはこの限りではありません。)
中古クラブは現実問題として、なかなか同じクラブ(統一感のある)でのセッティングが見つかりません。
(どこかで妥協が入る=ベストのおすすめではない。)
また、古いタイプではグリップの消耗が激しいものが多いです。
14本のグリップ交換をすると、結構な値段になります。
(例:グリップ1000円×工賃350円×14本=18900円)
(グリップ交換の代金は物により、店により変わります。上記はあくまで一例です。)
もう一つ、クラブの進化に伴って、スイング理論も変化していきます。
古いクラブを使って、最新のスイング理論を試しても、上手くいかないことが出てきます。
それでかえって迷ってしまったり、上達を遅くする原因にもなります。
こういったことから結局は新品の方が損しない選択と判断しています。
値段について

でも値段がやっぱり
高くなるよね

ここは考え方によって結構変わるので
お伝えしておきます
クラブをフルセットで買うと3万円~30万円が目安となります。(高いのはまだまだあります。)
値段を決めている要素は、
・素材(アルミ、ステンレス、軟鉄、チタン、マレージング、スチール、カーボン・・・)
・精巧度(重量、バランス、角度・・・)
・メーカー(メジャー、マイナー・・・)
・構造の複雑性
といったところが主です。
それにしても結構差がありますね。
そしてこのクラブセット、3万円と8万円前後は意外と商品があります。
有名な人気商品だと30万円コースです。
不思議なのがこの間の価格帯があまり見当たらないのです。
ちょっと細かく見ていきます。
3万円程のセットはある程度若い方をターゲットにした、入門者向けクラブです。
最大の特徴は重いことです。
ゴルフクラブは軽いものを作るのにはお金がかかるためです。
お付き合いで(自分はやりたくないけど)どうしても必要な方にはおすすめです。
ゴルフができないわけでは決してありません。
ただシニア世代には重すぎておすすめできません。
8万円程のセットもどちらかと言えば若い方向けです。
3万円クラスよりは軽いものが出てきます。
素材も少し良くなり精巧度も増します。有名メーカーからも出ています。
シニア向けの有名、人気商品よりは結構重いため、注意が必要です。
30万円程のセットはシニア向けの物が多くなります。
(厳密にはセット売りではなく、バラ売りの物をセットして=集めていきます。)
素材も良くなり、精巧度も高いです。
安心して使え、おすすめです。

30万円はちょっと高いな
初心者が使ってもいいの?

使っていけないことは
全くありません
ただちょっと気にかけても
いいことがあります。
ちょっと気にかけていいことというのは、周りの環境です。
どんな方と一緒にゴルフをされるかということです。
ゴルフというのはちょっと見栄とか自慢といった要素があります。
あなたが高額なクラブを持ったとして、周りの目はどんな感じでしょうか?
嫌味とか言われそうですか?
「そんなこと全然気にしない」という方は関係ないのですが、ちょっと気になるかなという方には、ネット商品という手があります。
*私は店舗での販売をしていたので、こういった商品をおすすめできない立ち位置でした。
今は退職したので、よりフラットな立場からお話できます。
おすすめ商品の一例
あまり多くはないのですが、値段もそこまで高くなく、おすすめ条件に合う商品です。
一度よろしければ見てみてください。
注意:2020年11月19日 このリンクに行くと「ページが見つかりません」と出ます。
その際はお手数ですが検索窓に「カタナ ボルティオ ニンジャ クラブセット」とお入れください。

一応おすすめできる理由を添えておきます。
ドライバー
・重さ=280g
・硬さ=R
・長さ=46
・ロフト=10°
・つかまり=フェース角1.5°
*おすすめ条件はすべて満たしています。(他の仕様もあります。)
その他の番手について。
3W=16°とロフトは大きめでやさしい。
5W=19°で標準。
U4=21°で5Wとの飛距離差がきちんと出る。
U5=24°でこれも適正。
6I=23°で飛距離的にはU5とかぶる可能性あり。得意な方か、場面により使い分ける。
7I=25°で367g。ロフトは立っており明らかに飛距離重視。軽過ぎないところで安定感を考慮。
8I以降もロフトは立っている。そのためAS(アプローチサンド)を入れている。
長さも若干長め(7Iで38インチ、平均は37~37.5インチ)で選択意図に合っている。
SW=56°で高さと飛距離のバランスがいい。(*SWはサンドウエッジで、バンカー(砂)から出す時に主に使うクラブのことです。)
注意点
極端に軽いクラブではありません。体力、パワーに全く自信が持てない方は、30万円コースの方がいい場合もあります。(ただ、重さのメリットも無視はできません。)
ASが48°で、SWが56°のロフトです。ちょっと間が開いていますので、52°辺りのウエッジが欲しくなるかもしれません。その際は別のクラブを購入することになります。
お値段は159500円(税込み)
*セット内容はクラブ14本、ヘッドカバー、キャディーバッグ、トラベルカバー
*2020年10月調べです。ご購入の際は再度ご確認お願い致します。
といった感じです。ご参考までに。
まとめ
- クラブ選びを間違うと上達が遅れます。
- オーバースペック(重すぎ、硬すぎ等)に注意です。
- 安いものは、重くて硬いので避けましょう。
- 周りの環境を考えて、気持ちよく使えるレベルの物を選びましょう。
間違ったクラブ選びは、ゴルフを必要以上に難しくし、上達を遅らせます。
私が1万人以上接客をしてきた中で、非常に多くの方がこの罠にはまっています。
「もらい物」とか「色々なクラブが混じっている」場合は特に注意です。
今回ご紹介した選び方を参考にしていただければ、そういった状況は必ず避けられます。
知っててやらないのは本当に損してしまいます。
限られた人生の時間の中で、効率良く上達し、満足感を最大限に高めていただけたらと思います。
今回は以上となります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
心おきなくゴルフが楽しめる世の中でありますように。
追伸:「本気で上達したい!」「満足できる結果を出したい!」という方は、ぜひこちらもご一読ください。
「現在の自分が過去の自分を上達させるとしたら」というコンセプトで書いた記事です。
結果を変えるには行動を変えるしかありません。
行動を変えるには環境の変化を利用します。
そして客観的視点を持つことで効率良く上達することができます。
https://golftk55.com/2020/06/20/golf-improvement/
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